公文国語の教材の内容を知ろう! 全体像と進度別の特徴が分かります

教材 公文

 公文はその知名度に反して、カリキュラムの具体的な内容を理解している人は多くありません。計算速度や先取り学習等、部分的に理解されている特徴はありますが、全体像を理解するのは難しい部分があります。

 しかし公文はその取り扱う範囲の広さのため、お子さんの学習計画全体に影響を及ぼします。影響度の高さ故に、全体を理解して計画を立てる重要性も非常に大きなものになってきます。

 今回はそんな公文の中でも、教材の量の多さと単元の曖昧さから、とりわけ全体像の把握が難しい国語のカリキュラムを扱います。ボリュームの大きな公文国語ですが、一つ一つ理解を進めていきましょう。

公文国語の教材の内容を確認する

 まずは公文全体の進度表を確認しましょう。

 学年ごとにアルファベットが割り当てられ、順に教材が進んでいく事が分かると思います。

 今回取り上げている国語については、8AからOまで31段階にカリキュラムが分かれています(研究コースを除く)。対象年齢も3歳から大学生まで、非常に幅広い範囲を取り扱っています。

公文国語の教材の進め方を確認する

 ではこの教材を公文ではどのように進めていくのでしょうか。

 公文では基本的に実際の学年と教材の進度は関係ありません。理解が早ければ何学年でも先に進んでいけますし、あやふやな部分があれば実際の学年より数学年戻る事もあります。特に学年と関係なくどんどん先へ進んでいけるという点については「先取り学習」と呼ばれ、公文が注目されている理由の一つとなっています。

 内容の難易度としては基礎を重視しており、中高大のどの受験においても、そのままで難関校の受験に通じる程それぞれの分野を深く掘り下げる事はありません。代わりに基礎は徹底した繰り返しを行うので、特に速度の面では非常にレベルの高いスキルを身に付ける事ができます。国語においては難解な文章を前にしても、要点を速く正確に理解するという点で公文の特色が出ます。

 公文では基本的に自習でカリキュラムを進め、毎日決まったペースでプリントを解いていく事になります。思考力や応用力が求められる難問が扱われるわけではないので、新しい分野の問題でも、例題を参考に自力で問題を解いていきます。多くの場合は週二回教室へ通う事になりますが、教室では授業を行うわけではなく、宿題の答え合わせとその日の分のプリントを解く事になります。

公文国語の教材をより詳細に理解する

 ここまでで大まかな全体像を見てきました。次にもう少しクローズアップして、どの教材でどのような内容を取り扱うのか見ていきましょう。本文内では公文国語を8つの段階に分けて説明しておりますが、より詳細に教材の中身を知りたい方は教材別の解説文へのリンクも併記しているのでご参照下さい。

8Aでは音と形から言葉というものと出会う

 まずは一番最初の教材に当たる8A教材です。

 生まれたばかりの赤ちゃんはまだ言葉というものを認識していません。意味を持っていない雑音と言葉、あるいは文字とその他の視覚情報の区別がまだ付いていないわけです。ここから徐々に意味のある音や形やを識別し、言葉を習得していきます。

 公文では「歌い聞かせ」と「漢字カード」によってここにアプローチしていきます。

 ひらがなの前に漢字というのは意外に感じる人も多いかもしれませんが、漢字は形が特徴的な上、ひらがなと違って「犬」や「空」など具体的なものと紐付いており、ひらがなよりも赤ちゃんにとっては親しみやすい概念です。ここで覚えた漢字は小学校に上がる頃には忘れてしまっている場合もあるでしょうが、文字を認識するこの段階においては有効なアプローチになってきます。

7A教材から5A教材では音読がテーマになる

 7Aから5Aでは音読がメインになってきます。

 8Aで言葉の音や形に出会った次は、文字という「形」と発音という「音」を音読によって結びつけていきます。例えばりんごであれば、りんごのイラストと「りんご」という文字が並べて記載してあり、親がイラストや文字を指差しながら音読してあげるようなイメージです。

 この段階では文字を単体で読める所までは理解が進まない事も多いです。単語レベルであれば短期的に記憶している事もあるのですが、5A付近で出てくる短文まで来ると、この教材をやっている段階で文章を読めるようになるのは少し厳しいかもしれません。しかしイラストと文字、文章が紐付いているという事をお子さんがなんとなくでも理解する事で、だんだんと言葉や文章そのものを理解するための土台ができてきます。

 7Aでは単語を扱いますが、6Aでは二語文、5Aでは三語以上の文章を扱うようになってきます。3歳から公文を始めたお子さんであれば、5A付近で最初の壁を感じるかもしれません。しかし総じてこのあたりの教材は読み聞かせが軸になるので、比較的気楽に取り組みやすい教材でしょう。

4A教材から2A教材ではひらがなを扱う

 5Aまでで言葉という概念に親しんできました。ここからは「ひらがな」という概念を扱います。

 これまで学んできた単語や文章は意味を持っていました。「りんご」であれ「きょうははれています」であれ、単語や文章には意味があり、イラストで表現したり、実際に経験したりする事ができます。

 しかし「あ」とか「か」と言ったひらがなそのものは基本的に意味を持ちません。少なくとも教材の中でひらがなは表音文字として扱われます。具体的な意味を持たないわけですから、小さなお子さんにとっては理解が難しくなってきます。

 さらに大きなトピックとして、これまでの「読み」に加え「書き」が教材の中に入ってきます。

 音読であればお子さんはある程度受動的に教材を進められます。絵本と同じですから、必ずしも机に向かって勉強する必要もありません。しかし「書き」は違います。自ら手を動かさなければプリントは終わりませんし、机がなければ文字を書く事もできません。

 このあたりの教材を学ぶお子さんは小学校入学前の事が多いでしょう。学習の習慣は当然ありませんし、長時間集中する事も年齢的に難しいでしょう。親の負担が最も大きくなるのはこのあたりだという事が言えます。

A教材からC教材では基本的な文法を学ぶ

 A教材はちょうど小学校一年生レベルの教材です。

 カタカナや漢字、文法の問題が出てくるのもA教材からです。B教材からは読解問題も出てきます。勉強らしい勉強が始まると感じられるのもこのあたりからでしょう。

 読解は評論文よりも物語文が中心になっています。論理的な文章の形式よりも、出来事や会話をベースにした物語の形式の方が自然に理解できるからです。ただし物語文は設定も話の展開もあまり決まった型がありませんから、絵本をどの程度読んできたかという所が教材の理解度に関わってきます。

D教材からF教材では文章をまとまりで捉える

 D教材からは短文ではなく、複数の文や段落間の関係を理解する段階へと進みます。

 C教材までも文章を読んで問題に答えてきましたが、問われているのは主に5W1Hのような単文の理解でした。D教材からは文章と文章、段落と段落のつながりを読み、全体としてどんな事を言いたいのか問うような問題が出てきます。

 大人からすると「文章が読めている=全体の内容を理解している」ですが、実際には全体を理解するまでには多くの事を学んでいく必要があります。最たるものがD教材からF教材で取り扱うつながりの理解で、ここの実力が不十分だと、一見文章を読めているのに、詳しく聞いてみると実は中身を全然理解していなかったという状態になります。

 そのためお子さん自身も親も「読めているようで読めていない」という状態に翻弄されやすくなるでしょう。お子さんは単文の意味が分かっているのに問題は解けないという点で混乱しますし、親はお子さんが自分の期待する程文章を読めていなかった事に動揺します。

 しかし教材をやる中でつながりを読む力は鍛えられています。

 授業を真面目に聞いていたり、ノートをちゃんと取っていたりするのに、なぜかテストの点数はあまり取れないという人はしばしばいます。単純な暗記は得意でも、文章題や応用問題が苦手になってしまい、ある段階で授業の内容が分からなくなってしまうような子です。この現象が発生する大きな原因はつながりを理解できない事にあります。その意味でD教材からF教材は重要性の高い内容を取り扱っていると言えるでしょう。

 漢字も引き続き各学年で習う全ての漢字が取り扱われます。漢字に関して最も恩恵を感じられるのもこのあたりになるでしょう。

G教材からI教材で現代文の総まとめを行う

 公文国語ではI教材で現代文の学習に一つの区切りを迎えます。J教材からL教材までは古文・漢文を扱うからです。M教材以降でもう一度現代文も登場しますが、そこまで進むと古文や漢文もごちゃまぜになってきて、現代文の読解そのものが主題にはなっていません。I教材が現代文の一つの集大成になると思って差し支えないでしょう。

 取り扱う文章も、原著を読もうと思ったら大人でも手応えのあるような本が揃っています。

 私自身は公文国語は最終教材を目標にすべきだと思っていますが、中間にもう一つ目標を設けるとしたらこのI教材完了を掲げるでしょう。I教材を完了すれば、大抵の本が読めるようになるからです。本が読めれば国語に限らず、ほとんどの分野を自力で学習できます。

 中学受験を目標にする人は、小4までにF教材を終える事を目標にする事も多いでしょう。F教材を終了すれば、公文国語の小学校レベルの教材が完了するからです。しかし中学受験においては、F教材修了では効果は限定的でしょう。中学受験では中学の範囲を扱えない分、知識よりも思考力や読解力という点で問題が難しくなる傾向があるからです。例えば中学受験の算数で因数分解は出題できなくても、出題する文章の難しさに制限は求められていません。

 ですから中学受験において求められる国語力は小学生レベルを大きく超える傾向があります。公文国語において設定する目標も、そこに合わせてF教材より先に設定できれば良い結果を得やすいでしょう。

J教材からL教材で古文・漢文が登場する

 現代文はI教材で一区切りが付き、ここからは古文と漢文が題材になります。

 公文を辞めるかどうか迷うタイミングはいくつかあります。一つは進学や受験でお子さんの生活が忙しくなり、公文を続ける時間がなくなった時。もう一つは親が公文を続ける意味を見失った時です。

 そしてJ教材からL教材というのは、親が公文に意味を見出しにくい区間です。

 なぜなら高校受験では古文・漢文が出てこないからです。この付近の教材にたどり着く年齢は、概ね中学生の間である事が多いはずです。中高一貫校でなければ高校受験は避けられませんが、古文・漢文は基本的に高校受験の問題に出てきません。こうなると目の前に高校受験があるのに、大学受験の範囲を勉強する事に意味を見出しにくい部分がある事は否定できません。

 しかし大学受験までを見据えた時、本格的な受験勉強が始まる前の段階で、古文や漢文をなんとなくでも読めるという事はとてつもないアドバンテージになります。国立大であっても、古文や漢文の読解問題における文章量や難易度は、現代文と比べてしまえばそこまで壁にならないからです。文法や単語の面で受験に十分な量の知識が公文だけで付くとは言えませんが、そこを固めてしまえば、ほとんどの大学のレベルで古文・漢文を得点源にできてしまいます。

 先行投資というのは、リターンを得るのが先になる程実行が難しくなります。どのようにJ教材以降へ向き合うべきか、いずれ考える時が来るかもしれません。

M教材からO教材でクリティカルシンキングを学ぶ

 公文国語はO教材が最終教材です。もう少し大きなくくりで言えば、M教材からO教材が公文国語のクライマックスです。

 I教材までは現代文を速く正確に理解する力を養います。J教材からL教材では文章が古文・漢文に変わりますが、こちらも内容の理解を目指している事には変わりありません。

 しかしM教材からは文章の理解を前提にして、そこから思考する事を目指しています。

 日本の教育の大きな流れとして、詰め込み教育から、自分で考える力を重視するようになってきています。ゆとり教育以降の流れですね。ゆとり教育自体は負の側面が取り上げられる事が多かったですが、終了後に詰め込み教育への逆戻りがあったわけではなく、より良い形で思考力を伸ばす教育を目指す方向に変化していっています。

 私達親の世代ではひょっとしたら足枷にさえなっていた「自分で考える力」は、もはや報連相やコミュニケーション能力のように、標準的に求められる能力になりつつあります。ともすれば実社会で役に立たないようにも思える受験の世界において、公文での学習は社会で生き抜く基本的な力を養う事にも繋がっていくでしょう。

公文国語の修了には数年では足りない

 大まかに各教材の内容や立ち位置を見てきました。細かい内容にはほとんど触れていませんが、それでもなかなかのボリュームだったのではないかと思います。

 このボリュームこそが公文の最大の特徴です。対象年齢の幅が非常に広いのです。

 例えばAⅠ教材から学習を始めたとしましょう。1つのアルファベットには200枚のプリントが割り当てられているので、全ての教材を終えるには4800枚分のプリントを進めなければなりません。しかも次の教材に進むまでには、1つのプリントを一定以上の速度で全問正解する必要があります。少なくとも3回は繰り返しが発生しますから、1万を優に超えるプリントを解かなければ、どんなにスムーズに学習が進んでも公文の最終教材にはたどり着きません。

 そして公文において、国語は最もアルファベットの数が多い教材です。国語は8AからOまでに31個のアルファベットがあり、22個の算数、23個の英語と比べても学習量が非常に大きくなります。当然学習期間も長くなり、5年や10年というスパンでの検討も必要になる場合があります。

 子育ての中のどの区間に公文を取り入れるのか。これはできるだけ早い段階で検討しなければなりません。

公文国語の教材を理解して戦略で優位に立とう

 今回は公文国語のカリキュラムを取り上げました。公文が就学前から大学受験まで非常に広い範囲をカバーしており、どの教材でどんな内容を取り扱うのか概要を説明してきました。

 取り扱う範囲が広いというのはどういう事でしょうか。公文は中学受験。高校受験と言った個別の受験に限らず、お子さんの全受験に影響を及ぼしうる存在だという事です。

 そして学習全体へ大きな影響を及ぼす教材にも関わらず、その全体像を理解して公文へ入会させている方は非常に少ないというのが現状です。ただしこれは裏を返せば、正しい理解の下に戦略を立てれば、受験戦略において他から大きく抜きん出られる事を意味します。

 本文・本ブログがその一助となれば幸いです。

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