公文国語Mはどんな教材? ついに国語の最終段階へ入ってきます

教材 公文 国語

公文国語Mは何年生くらいでやる教材なの?

 まずは公文全体の進度表を確認しましょう。

公文進度表

 M教材は高校相当のレベルの教材です。公文の国語では高校生レベルの教材が6段階あり、J教材・K教材では古文、L教材では漢文を扱いました。M教材からは現代文・古文・漢文がジャンルを問わず出題され、いよいよ最終段階に入ってきていると言えます。

 高校相当のレベルではありますが、扱う内容のレベルは高く、たとえ高校生であってもここまでたどり着いているというだけで誇っていいと思います。

公文国語Mはどんな教材なの?

 では教材の詳細を確認していきましょう。まずは公文公式のM教材の狙いを確認します。

「批評性」を喚起しながら、より高度な読解力を身につけます。各人物の特性や関係性、他者の視点、誤読、問題提起、反論等を意識しながら学習します。古文・漢文の読解力を高めます。

 J教材からL教材で題材になったのは「資料学習に基づく批評文読解」で、読解する文章が複数ある構成でした。M教材では文中の複数の人物や視点、主張を扱います。

 次に使用されている教材を確認しましょう。

教材の番号テーマ教材
M1-M70人物座標万葉集, お伽草紙, 古事記, 死の家の記録, ガリレイの生涯
M71-M130他者の視点ヴェニスの商人の資本論, 源氏物語, 対論 脳と生命
M131-M200検証科学と方法, 史記, 戦国策, 時代のきしみ

 M教材で問われるテーマは大きく「人物座標・他者の視点・検証」の3つに分かれています。テーマだけを見ると抽象的ですが、概ね「たくさんの人・視点・主張を読み解く」と理解すればいいでしょう。

 また教材を見ると、現代文・古文・漢文の全てを取り扱っている事が分かります。公文国語の総まとめが始まっている事の表れでしょう。またラインナップとしても、読書好きな人でも抑えていない本が混ざっていそうな歯応えのあるものになっています。

M教材で必要なのは多様な観点の理解

 M教材のテーマを「たくさんの人・視点・主張を読み解く」と説明しました。この点をより詳しく説明していきます。

 I教材までの文章は単一の主張を追うものでした。内容の難易度は高いものでしたが、文章の中に様々な視点が混ざっているというものではありません。J教材からL教材では資料文と批評文の二つの文章がありましたが、構成としてはあくまで資料をベースに批評文の主張を理解するというものです。異なる複数の主張を理解するものではありませんでした。

 しかしM教材では一つの文章の中に多様な視点が混ざります。

 例えばM91からは源氏物語を扱います。その中で、身分の低い桐壺更衣が帝の寵愛を受ける事に対し、周りの女性がどう思っているのか問う問題があり、回答では「身分の高い人は桐壺更衣に優越感があるから余裕がある」が「身分の低い人は同じ立場なので嫉妬が強くなる」という複数の視点での回答が求められます。

 物語文の読解において一番シンプルな形は、主役の心情を追う形式のものです。源氏物語の同じ教材であれば、桐壺更衣が嫉妬されて辛いという事を読み解くのが主役の心情という事になります。しかし今回出題されているのは主役ではなく、周りの女性の視点についてです。より多様な観点から文章を理解する必要があるのです。

感情とルールとその先の複雑さ

 多様な観点の理解というのは、現実の人間関係においても求められます。

 多くの人は小さい時には自分の感情を重視します。何かを決める基準も、楽しい、やってみたい、あるいは怒られるとか怖いとかの感情がベースになってきます。

 そして集団生活を送る中で、徐々に客観的なルールを守れるようになってきます。みんなが思い思いに好きな事をしていたら、集団生活が成り立たない事に気付きます。

 しかしもう一歩進むと、ルールの背景には個人の思惑や感情がある事が分かってきます。友達を殴ってはいけないというのは客観的なルールですが、その裏には集団生活を円滑に進めたいという先生の思惑が乗っかっています。ですから同じ暴力であっても、その内容によっては判決の厳しさが変わってきます。揉め事を収めるための暴力であれば「次から気を付けろよ」で済ませようとする人もいるかもしれませんし、警察沙汰になるような暴力であれば退学や停学も視野に入る事が多いでしょう。

 ルールを破ってもいいというわけではありません。しかし破った事に対する扱いは、判決を下す人の思惑によって変わってくる事が多いのです。

 自分の感情のままに動くのも、客観的なルールに従うのも、どちらも単一の文脈に従って動くという点では変わりません。しかし現実には客観的なルールを下地に、様々な人の事情や感情が絡んできます。

 M教材で扱う複雑さというのも、こうした現実の複雑さと同じ種類のものです。

マンガとアニメは現実の複雑さに気付くツールになる

 こうした複雑さを理解するためには、マンガやアニメが有力なツールになります。

 C教材とE教材の解説でも、マンガやアニメが有用だと述べました。その際は小説よりも簡単に物語を読めるので、物語文という形式に慣れやすいという点をお伝えしました。

 M教材まで来ているお子さんが物語に慣れていないという事はほぼありえません。しかし多様な視点から文章を読む事を考えた時、また違った観点からマンガやアニメは有用です。

 マンガやアニメの大きな特徴に、その多様性があります。時代背景は地理的にも時代的にもお子さんの今の環境とは大きく異なる設定が可能ですし、登場人物は見た目も年齢も可能な限りの多様性と特徴を持たせられています。そして何より多くの人や組織が、異なる考え方の元に行動しています。

 例えばワンピースは主人公達が海賊ですが、仲間は全員異なる目的を持って旅をします。ですから同じ組織に属していて、同じ場面を経験していても、全員感じる事が違うのが分かりやすく描かれています。新しい島に到着した時に、美味しい食事を期待する人と、宝を探す人と、怖がって上陸したがらない人と...という感じですね。話の流れとしては共通した目的があってその島へ行っているのですが、それぞれに全く違う事を考えている。こういう複数の視点という概念に、マンガやアニメであれば自然と触れられるのです。

 物語であれば全般的に同じ傾向はあるかもしれません。しかし例えば小説や邦画では、私小説の文化がありますから、必ずしも多様な視点を見せてくれるとは限らない部分があります。洋画は直接説明する事を良しとしない傾向があるので、モチーフや比喩による表現がお子さんには理解しにくい部分もあります。ハリウッド系の映画はどうしても心情描写よりアクションに目が行ってしまいますよね。ドラマは良い選択肢ですが、昔のように友達がみんな見ているドラマがあるような時代ではありませんし、男の子であればそもそも興味を示さない事も多いでしょう。

 作品の良し悪しはもちろんありますが、名作を選べばマンガとアニメは多様な視点を理解するために打ってつけの教材なのです。

多様性の理解は新しい世代の方が得意分野

 多様性への認識という意味では、親世代よりも子供の世代の方が間違いなく優れたものを持っています。ですから上記のような方法に頼らずとも、お子さんは自然とM教材で求められる多様な視点の認識を手に入れているかもしれません。M教材までたどり着いているお子さんであれば、過剰な介入をしなくても、見守ってあげるだけで良い結果が出せる教材となりそうです。

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