公文国語Nはどんな教材? 読解から思考への一歩目を踏み出します

教材 公文 国語

公文国語Nは何年生くらいでやる教材なの?

 まずは公文全体の進度表を確認しましょう。

公文進度表

 N教材は高校相当のレベルの教材です。公文の国語では高校生レベルの教材が6段階あり、J教材・K教材では古文、L教材では漢文を扱いました。M教材以降では現代文・古文・漢文がジャンルを問わず出題され、いよいよ最終段階に入ってきていると言えます。

 高校相当のレベルではありますが、扱う内容のレベルは高く、たとえ高校生であってもここまでたどり着いているというだけで誇っていいと思います。

公文国語Nはどんな教材なの?

 では教材の詳細を確認していきましょう。まずは公文公式のN教材の狙いを確認します。

 「批評性」を喚起しながら、より高度な読解力を身につけます。複数のテキスト文をあわせて読解できる力を習得します。現代語訳なしでも、古文・漢文の読解ができるようにします。

 複数のテキスト文を批評的に読むという点ではM教材と変わりはありません。大きく違うのは古文・漢文の現代語訳がここに来てなくなる事です。

 次に使用されている教材を確認しましょう。

教材の番号テーマ教材
N1-N60レトリック古今和歌集、レトリック感覚、平家物語、文章読本、陰翳礼讃
N61-N130多角的な視点枕草子、徒然草、アラン定義集
N131-N200仮定と推論物理学はいかに創られたか、論語、講孟箚記、日本の思想

参照:公文式国語教材の一覧

 N教材で問われるテーマは大きく「レトリック・多角的な視点・仮定と推論」に分かれています。M教材で扱った「人物座標・他者の視点・検証」というテーマの発展系というニュアンスが強いです。

読解から思考への一歩目を踏み出す

 公文の国語は読解力の向上をメインのテーマとして扱っています。ここまでもより難しく、より多様なジャンルの文章を読めるよう教材が発展してきました。もちろん漢字や文法のような知識系の分野もしっかり取り扱ってきていますが、これは読解に必要だからというニュアンスを含む学習でした。

 読解力というのはいわばインプットの力です。書かれている事を正確に理解する力であり、ここの力がどれだけあるのかという所が、先の世界へ進んだ時の礎になってきます。一方でアウトプットの力は読解力とはまた別のものです。理解した事実を元に思考を組み立てる力は、ここまでの教材では扱ってこなかったものでした。

 N教材ではいよいよここに踏み込み始めます。

 N教材のテーマのうち「レトリック」と「多角的な視点」という所はインプットに関わる部分だと言えます。一方で「仮定と推論」というのは、読解した事を元に、考えを一歩進めるような問題が出題されます。これは公式サイトの教材例「N160b」の問題からも読み取る事ができます。

 問二:もし孔子の遺言が為政者たちにとって的を射たものだったならば、当時はどのような政治がはこびっていたと考えられるか。

参照:公文式国語教材の一覧

 設問はまさしく「仮定と推論」の形を取っています。孔子の遺言が的を射ているという仮定の上で、どのような政治がはびこっていたのか推論するという形式を採っています。

 問題文は論語の複数の箇所から孔子の政治に対する発言や考え方について書かれた部分を抜粋しています。設問では当時の政治について回答する必要がありますが、文中に当時の政治そのものについて記載されているわけではありません。

 書かれている事をそのまま回答するのではなく、書いてある事を前提に一歩進んだ回答をする。思考への第一歩を踏み出すような設問だと言えるでしょう。

思考力という点においては学年不相応

 一方で拍子抜けした人もいるかもしれません。思考力を問う問題としては、N教材なのに非常にレベルの低いものだからです。

 問題の中身を簡単にしてみましょう。小さな子供がいるのだから、もっと家事をちゃんとやってほしいという妻がいるとします。この時に夫はどんな風に家事へ取り組んでいたでしょう。ここで扱っているのは、このレベルの仮定と推論なわけです。

 この答えが本当に分からないという人はそうそういないでしょう。家事や育児にちゃんと夫が取り組んでいないというだけです。これを思考というかどうか怪しいという人もいるかもしれない程ですが、文章に「夫は家事や育児にちゃんと取り組んでいません」とは書いていません。簡単すぎるかもしれませんが、書いてある事を元に推論を行う必要がある事には変わりありません。

 この程度であれば、はっきり言って小学校受験で求められてもおかしくありません。中学受験でははるかに高度な思考力が求められます。

 ではどうして高校レベルも終盤のN教材において、このような簡単な推論を求める問題が出てくるのでしょうか。

思考力の重要性が急激に上昇している

 大きな要因は公文式の歴史が長く、また学校教育をベースに作られたものだからでしょう。

 直近では思考力が重視される風潮が高まっています。学校教育の様々な場面で思考力を養う取り組みが為されています。

 しかしこうした流れが始まったのはゆとり教育が始まった2002年頃からでしょう。ゆとり教育は大きな批判を浴びていますから、世の中で思考力を重視しようという風潮が高まってきたのはもっと後からです。

 一方で公文の最初の教室が解説されたのは1958年です。公文の歴史から見て、思考力を重視しようという流れはごく最近の流行だと言えます。

 さらに公文式全体の目標は「自学自習で高校教材」というものです。この「高校教材」というのは当然教育課程の高校教材の内容を指しますから、受験の傾向が少し思考力を重視するようになったからといって、教材全体の方向性が大きく変わる事はなさそうです。

 公文は創設者の名前が会社名に入る会社で、現在の代表取締役は創設者の一族とは違う方です。教材の中身が大きく変わるような事はなかなか起こらないと考えられます。

 このあたりが思考力における公文式と受験との乖離の原因になっていると思われます。特に流行があったのが比較的最近である中学受験とは目指す方向性にある程度の乖離が認められます。

思考力が初歩的でも難易度は非常に高い

 ただしレベルが低いというのは、あくまで思考力という一点のみにおいてです。読解においては相当に高度な事が求められます。また思考の基礎となるのはインプットですから、思考においてもここまで鍛えた力は強力な武器になります。

 ただ公文式ではアウトプットのトレーニングをほぼ行っていません。いかに高度な文章を読んでいても、そこから思考に繋げるための回路は鍛えられていない状態です。N教材においてようやく思考をするための第一歩を踏み出すのだと理解してもらえればと思います。

N教材攻略のポイントは思考力の発揮

 ここまでを踏まえると、N教材のポイントは教材が普段の思考の延長線上だという事に気付く事になります。

 N教材にたどり着く年齢であれば、ここで求められるだけの思考力自体は身に付いている事が多いでしょう。しかし公文の国語ではここまで読解のみを求められてきました。お子さんの中に思考する回路自体はあっても、公文のプリントを解く回路の中に、思考という回路が組み込まれていなくてもおかしくありません。

 するとやるべき事は思考力を鍛える事ではありません。既にある思考力を、公文のプリントを解く時にも使えるようにしてあげる事です。

 例えば問題文の内容を説明してもらうだけでもいいでしょう。公文のプリントを解く時、普段は人に内容を説明しません。公文用の回路の中には、説明という行為は組み込まれていないのです。だから公文と説明という回路を繋いであげるだけで、その他の日常で使っている回路との化学反応が起きる事が期待できるわけです。思考回路との接続が起こせれば、内容を説明しているうちに自然と解答が分かるという事もありえます。

 これは公文に限らず起こる現象です。論理的に考える力があっても、上下関係の厳しい組織に属していれば、上の人に意見しようという発想がそもそも生まれない場合はあるでしょう。ちゃんと敬語を使えても、会社の文化によっては年下の上司や年上の部下に敬語を使わない人はいるでしょう。能力のあるなしと、能力を発揮するかしないかというのは別の次元の話なのです。

 公文の学習においても元々備わっている思考力を発揮できれば、N教材で求められる思考力には対応できるでしょう。

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