公文国語Hはどんな教材? 「読みにくい日本語」へ立ち向かう教材です

教材 公文 国語

公文国語Hは何年生くらいでやる教材なの?

 公文国語Hは中学2年相当のレベルの教材です。中学生がやっているのが標準的なレベルだと言えるでしょう。

 小5でこの教材を終えていると「高進度学習者」としてトロフィーをもらう事ができます。中学受験を控えている人は小4あたりで公文から中学受験塾へ転塾するパターンが多いですが、このあたりまで進んでいれば中学受験にも十分活きる力が身に付いていると言えます。

公文国語Hはどんな教材なの?

 公文国語HはHⅠとHⅡに分かれています。まずはHⅠの内容を確認していきましょう。

 >1200字程度の長文を読み、文章中のさまざまな表現のつながりをとらえる力、また各パラグラフの機能(役割や働き)とその配列を把握できる力を養います。Hグレードのすいせん図書50冊や俳句・短歌と出合い、読書と語彙の幅を広げます。常用漢字を、俳句・短歌などを用いて学習し、語彙を拡充します。

参照:公文式国語教材の一覧

 俳句・短歌が出てくるのは大きな特徴でしょう。その分推薦図書を題材にした読解問題は減り、読解問題の記述量も減っています。

 続けてHⅡ教材の内容を確認していきましょう。

 >語句相互の関係性に着目し、重複内容等をまとめるスキルを学びます。語句指定に基づいて縮約するとともに、語句や文章相互の関係と展開を意識しながら複数の解答箇所をまとめられる記述力を養います。常用漢字の学習を通して語彙を拡充します。また、培った読解力に基づき文法学習や高校入試レベルの文章読解を行います。

参照:公文式国語教材の一覧

 HⅡ教材では「縮約」がメインです。また面白い所として、H教材の最後には高校入試の問題も出てきます。

H教材攻略のポイントは?

 H教材で注目すべきは「特徴的な日本語」の登場です。どういう事でしょうか。

 同じ日本語であっても、書く人・話す人にとって特徴があり、場合によっては日本語であってもコミュニケーションは成立しない事があります。最も分かりやすい所では方便でしょう。同じ言葉でも関東でも関西ではニュアンスが違ったり、津軽弁のような特徴的な方便であれば聞き取る事すら適わない場面があります。日本語というのは多様な言語です。

 そして多様性が表に出てくるのがH教材だと言えるでしょう。

 まず目に付くのは俳句・短歌の登場です。HⅠ教材の121番から190番までで俳句と短歌を扱います。俳句や短歌には古い言葉が使われ、大人でも直感的に意味が理解できる人はそんなに多くないでしょう。またその他の教材の文章でも「山椒魚」や「どくとるマンボウ漂流記」のような少し古めの文学作品や、「解剖学教室へようこそ」や「イルカが知りたい」のような理系の文章と言った特色のある文章が出てきます。

 いずれも慣れている人にとっては問題なく読めますし、特別難しい用語が多用されているわけではありませんが、構成や言い回しに独特さがあり、少し違った読み方が求められます。

 G教材から「縮約」という概念が出てきて、記述力と同時に内容の的確な理解が求められます。しかしこうした目に見えない壁によって、理解が難しくなってくるのがH教材の特徴でしょう。

「読みにくさ」は多様なもの

 この独特さから来る「読みにくさ」は体系立てて対策を打つのが難しい分野です。なぜなら独特さは多かれ少なかれ、作家や学問ごとに存在するものだからです。

 例えば文学作品の独特さと言っても、太宰治の独特さと大江健三郎の独特さでは全くニュアンスが違ってきます。理系の文章であっても数学と化学と物理学では難しさの種類が違うでしょう。無数にある読みにくさのそれぞれに対して対策を打つ事は現実的ではありません。

 こういう時の対策は一つです。個別の読みにくさへ対応をするのではなく、読みにくい文章を読んだという経験そのものを重視するのです。

 ただ読みにくい文章を読んだだけでは「読んだけど全然頭に入ってこなかった」という所で止まってしまいます。しかし一度、何かしらの読みにくい日本語をしっかりと理解する経験を持てれば、日本語というものが実は多様である事、読みにくさのある文章には時として大きな価値のある情報が含まれている事が体感できます。

 その体感があれば、他の種類の読みにくさと直面した時にも経験が活きます。これはあの時のような読みにくさを含んだ文章で、読めれば面白い事が書いてあるかもしれないと思えます。

読みにくさを乗り越える情熱を持てる分野があるか

 読みにくい文章を読む時には経験が活きるという話をしました。ではその経験を得るための最初の一歩はどのように踏み出せばいいのでしょうか。

 これはお子さん自身の好奇心に尽きます。読みにくさを乗り越えるだけの情熱を持てる好きな事を一つ持つという事です。

 公文の問題文は名著が多いです。ちゃんと読めれば後の人生にまで影響を与えるような作品が揃っています。しかしテーマは一般的で、必ずしも一人一人の興味関心に沿った題材ではありません。読んでしまえば価値のある教材でも、最初の壁を乗り越えられず理解できなければ意味がありません。

 よりお子さんの興味関心に沿った難しい文章を、事前に読んでいるという事が大きなアドバンテージになります。

 虫や恐竜、電車と言った好きな物があるというのは一番分かりやすいでしょう。海外への憧れがあれば、別の言語で文章を読むというのも糧になるかもしれません。親が本を読んでいれば、大人への憧れから難しい本を読もうとするかもしれません。

 お子さんが興味を持っている分野について、より高いレベルの世界を見せてあげようという試みは効果的なものになるでしょう。

読みにくさを乗り越えた経験は将来を変える

 そして着目すべきは、実社会においても「難しい日本語」を理解するというのは大きな力になるという事です。

 理系の仕事であれば学術書や論文。法律系の仕事であれば条文や判例。プログラマーであれば公式のドキュメントと言ったように、専門性を身に着けようとすれば必ず読みにくい日本語は存在します。もちろんソースが日本語以外だという場合も珍しくない分野はありますが、日本語だから理解できるという話ではありません。いくら翻訳ツールの性能が向上しても、内容そのものに必ず難しさはあります。

 専門性の高い文章は、読むだけで頭が痛くなるという人が大半だと思います。だからこそ文章を読んで理解できるというだけの事が、実社会において大きなアドバンテージを与えてくれます。これは専門職に限りません。専門職の人と関わる仕事であっても、ただ専門的な話がある程度理解できるというだけで一目置かれる場合は多いでしょう。

 G教材まではどちらかと言うと基礎学力のニュアンスが強いものでした。例えばG教材では記述量が50文字程度に増えましたが、50文字程度の作文ができる能力というのは大人になってしまえばさすがに誰でも持っています。しかしH教材で培っていく力は違います。ここを基礎に身に着けた読解力は、大学受験を終えた後の人生もを後押ししてくれます。

 中学受験をする子であれば、公文は小4あたりで辞める場合が多いでしょう。そして小6相当の教材であるF教材を一つの目標にする場合が多いのではないかと思います。しかし私としてはもっと先、H教材を目標にしてほしいと思っています。

 もちろん簡単な事ではありません。しかしG教材までで培った力というのは、いずれほとんどの人が身につける力です。公文をやってて良かったと後からも思えるのは、H教材ではないかと思うのです。

 その意味でH教材は一つのターニングポイントになる教材だと言えるでしょう。


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